2011年10月12日

「新世界より」/貴志祐介

新世界より(上) (講談社文庫) [文庫] / 貴志 祐介 (著); 講談社 (刊)

「呪力」と名付けられた超能力、そういった分野では「PK(念動力)」と呼ばれる能力を、人間が使いこなしている世界。無敵となりえる能力ゆえに争いがないよう仕組みが整えられ、秩序が保たれている、そんな「新世界」が舞台。
科学による人類進歩の目標の中で意図的に覚醒させられた人々だが、その能力を持つ者と持たない者が共存することは無理だったようで、両者の凄惨な争いの後の時代、という設定になっている。
何かの結界のように張り巡らされたしめ縄の中で生活しているのは呪力を持つ大人と、呪力が目覚めるのを待ち焦がれる子供たち。結界の外にいるのは奇形の生物ばかり、という噂…。

なにかのきっかけで秩序や平和に疑問を持ち、それらを暴こうとすることが、とても危険を伴う行為として語られている。その世界を統べる人間にとっては「危険な思想」を持つ人間に映り、排除の対象となってしまう。早季たちが様々なものを巻き込みながら逃避行を始める理由である。
我々も案外同じような環境だったりして? 知らず知らず、汚い部分が美しい記憶と差し替えられている、なんてことを、少しは疑ってみてもいいかもですよね。

当初、周囲の子役たちが呪力に関して非凡な才能を発揮していくのに比べて、えらく平凡な少女として登場した早季ですが、苦難を乗り越えていくと共に他の人間にない特異な強さを見せていく。早季の持つ強さというのが、呪力に因らないところにあるのがおもしろいのです。

貴志氏のホラーはいつもラストにゾッとするものが用意されていると思いますが、「犯人」の極悪非道さであったり、人間の性分に潜む黒い部分であったりと様々、今回はどんなだったでしょうか。
「無知であること」の恐ろしさ。私たちは、早季と共に、胸をえぐられるような真実を見つけることになるのです。ラスト数ページはまさに驚愕、まさに思わぬ方向へ。恐ろしくもあり、悲しくもある締めくくり、ではないでしょうか。

上中下巻とたいへん読み応えがありますが、スピーディな逃避行が中心となっているのですぐ読めてしまいました(あ、あと、わりとグロいです)。角川文庫って紙厚いかも?文庫の厚さの割には量は少なく感じました:余談。
posted by アンゴ at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 本雑誌マンガ | 更新情報をチェックする
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